地域のこと
移住やローカルビジネスと「満足度」について

わたしたちは皆、「動く場所」と「居つく場所」のバランスを取りながら生きています。さらなる成長のために仕事をしたり勉強をしたりする場所と、頭を空っぽにしリラックスしながら心の羽根を伸ばす場所です。
たとえば、「動く場所」が職場なら「居つく場所」は家。「動く場所」が都心部なら「居つく場所」は地方。自分の人生を拡大させてゆくために、ある程度の緊張感をもって成長するための場所と、すべての心のよろいを脱いでゆったりと過ごす場所が、都市部にも地方にも、それぞれあるような気がします。そして、どんな場所に住んでいようが、その両方の時間がおそらく誰にとっても必要です。
動きすぎると心が死ぬし、居つきすぎるとちょっと飽きる。「動くことと居つくこと」にはきっと、心地よいバランスというものがあり、そのバロメーターは人によって全然違っています。
となると、さまざまな生活の在り方が提唱される中で、自分だけのバロメーターを頼りに、自分が満足する生き方は何なのかを模索する必要が出てくるのかもしれません。都市部に住み続けるか、それとも地方へ移住するか。あるいは都市と田舎の二拠点か、「都市と田舎のハイブリット」のような場所を探すか。さまざまな選択肢がある中で満足して選んでゆくために、一つ、ポイントがあると感じます。それは、「動くことと居つくこと」という過ごし方の軸と、都心と地方それぞれが持つ「環境的な雰囲気」の軸を考えるということです。

たとえば、森に対する印象は、人によって様々です。「森ってすごくいいよね。癒される場所だよね。」と話すサラリーマンがいる一方で、「森なんて僕らにとってはただの現場。別に癒しの場所でもなんでもない」と話す林業従事者がいます。これは、同じ森という空間でも「動く場所」、つまり働く場所としての森なのか、それとも「居つく場所」としての森なのかという、過ごし方が違うことによるイメージの違いです(表の縦のライン。この場合、②と④)。
さらに、そもそも都心と地方には「環境的な雰囲気の違い」というのもあります。地域ビジネスの場合、都心での競争率の高いビジネスと比べると、比較的ゆるやかな生産性である場合も多いように感じます。回転率が速く、常に混雑しているカフェのような都心部と、席と席の間がゆったりしていて、くつろぎがあるカフェのような地方。「動く場所」すなわち職場が、ローカルなのか都心なのかという違いは、働き手にとっては「どのような雰囲気のなかで成長していきたいのか」というところにも、とても重要な意味を持つように思います。(表の横のライン。この場合、①と②。)
おそらく都心部から地方への移住を決める人たちは、そうした違いを直感的に感じ取り、「自分だけの心地よさ」を模索している人たちなのだと思います。
子供がいるのか、いないのか。バリバリ働きたいのか、ゆったりしたいのか。自分に合う生活スタイルを確立させるということは、人生ステージや価値観も踏まえたうえでの、「絶対的で主観的なバロメーター」が、大切なのかもしれません。