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飛騨の木材コーディネートの取り組みを視察!

PROJECT:流域連携

視察日:2025/07/10~07/11
訪問先:株式会社 飛騨の森でクマは踊る(ヒダクマ)/森の端オフィス/飛騨市役所/西野製材所/柳木材/やまかわ製材舎/飛騨森林組合


1. 背景と目的

森林資源をどのように活かし、地域の持続可能性に結びつけていくかは、山間地域共通の課題です。根羽村とつながるトリカンとしても、根羽スギを矢作流域のなかでどう流通・活用させるかという点で、課題意識を持っています。
今回の飛騨地域への視察は、根羽スギの新たな価値創出を目指し、地域ぐるみで「木材コーディネートのしくみ」を構築している先行事例を学ぶことを目的に実施されました。視察はトリカンメンバーに加えて、根羽村森林組合・根羽村役場のみなさん、一般社団法人ねばのもりから杉山さん、そしてnebane伴走アドバイザーである株式会社やまとわ奥田さんとご一緒させていただきました。


2. ヒダクマについて

「株式会社 飛騨の森でクマは踊る(通称:ヒダクマ)」は、広葉樹資源が豊富にある飛騨地域において、地域の森林・製材業者・デザイナー・企業などを橋渡しする中間支援的な存在です。クリエイターや企業とのコラボレーションや、飛騨地域の森林を案内するイベント企画をはじめとしたコミュニケーションづくりなどを通じて、従来のしくみの中では流通しづらかった広葉樹材に、新たな価値を見出しています。トリカンもヒダクマさんとは以前からお付き合いがあり、今回は三回目の訪問となりました。


3. 視察内容

① 飛騨地域の背景と課題

飛騨地域では、戦後の拡大造林政策の影響を受けなかったため、自然の状態に近い広葉樹林が維持され、森林の約7割を広葉樹が占めています。一方で、広葉樹は扱いが難しく、市場でのニーズが少ないため、長らくチップ材など低価格な用途に限られてきました。こうした背景から、「価値がない」とされてきた木材をどう価値あるものに変えていくかが地域にとっての大きな課題となっていました。


② 飛騨での取り組み

この課題に対し、飛騨地域ではそれぞれの関係主体が互いに連携しながら、解決の取り組みを行っていました。

  • ヒダクマ:都市部の設計士やクリエイター、地域材利用に前向きな企業に対して新たな活用提案し、什器や内装など具体的な形での導入を促進。ホオノキの木材ボードや木のクレヨンなど、顧客企業との実際のやり取りの中で生まれたサンプルを見せていただきました。

  • 森の端オフィス:ヒダクマが補助金を活用して建設した、広葉樹を活用したモデル空間としての施設。建材としての木材利用だけではなく、端材を活用した断熱材、飛騨の森林を構成する樹種を網羅的に使った内装材など、地域材利用の取り組みを肌で体感できる仕掛けがたっぷり詰まった空間でした。
飛騨材の多様な活用方法を認知・体感できるヒダクマの施設
森の端オフィス


  • 西野製材所:針葉樹製材から広葉樹製材へ技術を転換し、扱いにくい材にも積極的に対応できる体制を確立されていました。広葉樹材は収穫してからすぐに樹皮を取り除くのが大切であること、曲がりのない材は意外にも割れが多くなりやすいことなど、広葉樹製材ならではの面白さを伺えました。
西野製材所 西野さん

  • 柳木材:「中間土場」を設け、木材の現物を見ながら顧客とともに構想・選定できる場を実現されていました。自社で森林も保有されているため、木材業者としてのふるまいだけではなく、コミュニケーションのハブとしての機能も担っている様子が伺えました。
柳木材 柳さんからは、飛騨材活用の拠点となる中間土場のことなどについてご説明いただきました

  • やまかわ製材舎:節材・曲がり材・小さい材など広葉樹の多様な状態に合わせた柔軟な製材へ対応した製材所を運営。現状の製材所だけでは新しい活用で販売までつなげたい顧客に対応できないため、将来的にその受け皿となることを目指していました。
やまかわ製材舎代表 及川さん

  • 飛騨森林組合:針葉樹だけではなく、広葉樹の伐採・搬出を担い、森の状況と製材現場をつなぐ役割を果たしていました。人工林と違って広葉樹は天然更新が基本であること、伐出が非常に大変だからこそ面白みもあることをご説明いただきました。
飛騨森林組合 新田さん

これらの取り組みは、「マーケットの状況に森を合わせていく」のではなく、「森の状況にマーケットを合わせていく」という発想に基づいて、連携されているという点が印象的でした。


4. トリカンとしての所感

視察を通じて、「価値がない」とされていたものに新たな価値を見出し、社会とつなぐためには、物理的な流通の仕組みだけでなく、人と人との関係性や視点のコーディネートが不可欠であると感じました。

飛騨では、製材所や流通拠点が川上と川下の双方を理解した上で、それぞれの立場とニーズを橋渡しする機能を果たしていました。トリカンが同じように川上と川下の間に立って全体を調整することは難しいかもしれませんが、出口に近い立場として、製材所や地域材に関わる人々をつなぐハブのような存在にはなれると確信しました。

また、「森に合わせてマーケットの状況を考える」という発想は、今後の地域林業において大きな転換点となると感じました。根羽においても、単に需要へ対応した流通ではなく、森を起点に「誰に届けたいか」を明確にするような視点を持った流通が求められているのかもしれないと思いました。


5. 根羽とトリカンが活かせること

今回の視察から、トリカンがモデル空間の窓口となることができないか、その可能性を感じました。トリカンが運営する施設や関連する場で根羽スギを積極的に利用することで、販路拡大のきっかけ作りを行えるかもしれないと思いました。地域材の活用に関心がある設計士やクリエイターと根羽の製材所をつなげ、下流域地域で根羽スギの存在を認知してもらうためのコミュニケーションのハブになることを目指すことがまずは重要かもしれないと感じました。

また、森から発想する販路づくりに関しても、その重要性を実感しました。現状では難しい部分もありますが、根羽の森林状況に応じた活用方法をトリカン自身が実現したり、「誰に・どう使ってもらいたいか」という視点から、根羽村と連携することが重要かもしれないと感じました。


6. 総括

飛騨の取り組みから学んだ最も大きなことは、「素材の価値は、つなぎ方次第でいくらでも引き出せる」ということです。それを実現するためには、各プレイヤーの立場を尊重しながらも、共通のビジョンをもって連携し合う「場」と「人」が必要だと感じました。

トリカンはこれまでの取り組みの中で、地域内外の多様な人との関わりを持ってきました。今回の視察を通じて、その関係性をさらに具体的な木材活用へとつなげていくことの重要性を強く感じています。

根羽の森林を未来へ引き継ぐために、「いまある素材」と「いま出会える人」を活かすかたちで、地に足のついた林業・木材活用の仕組みを築いていく。そのための第一歩として、今回の飛騨視察は大きな学びをを与えてくれました。

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