森のこと
日本の森林がもつ「ゆがみ」について
今、日本の森林ってとても豊かで、ふんだんに木があります。日本の面積3800万ヘクタールのうち約2500万ヘクタール、国土の67%が森林におおわれています。
『積極的に木材を使っていこうという動きもでてきています。』
こう書くと、日本にはたくさんの自然があって温暖化対策に貢献しているとか、緑のダムとして森と共生しているとか、そんなイメージが連想されるかもしれないのですが、実際にはそうとは言い切れません。
現代の日本の森林は樹木の高齢化が生じているからです。今からだいたい60年ほど前、日本には全国的に、樹木を植えまくった時代がありました。「戦後の拡大造林政策」と呼ばれ森林について知ると必ずでてくる話なのですが、それまでの過度な木材利用で禿げ山ばかりになっていた日本中の山に、スギやヒノキをたくさん植えたんです。この大規模な植林は、戦後すぐの1950年代から60年代後半くらいまで国の政策として行われていました。
そこから60年ほど経過した今、当時植えた木は60歳。樹木は20~30歳をすぎると光合成の活発さが鈍化してくるので、二酸化炭素の吸収量が少ない森林が多くなっている状況といえます。また、弱っている木が生えっぱなしになっていたり森林自体がもっている力も弱まっているため、虫や動物が激増して木を枯らす、みたいなことも発生しています。
つまり、ひとことで表すと、日本の今の森林って「ゆがみがある」んです。特定の年代の樹木が多く、土のなかも地上も、多様性に乏しくなっている。そのゆがみを健康にするために森林環境譲与税があるし、森林利用を盛り上げる動きがでてきている、といえます。
こうしたことは、実際にしっかりと裏側まで知ったからこそつながりが見えてくるのですが、普通に生活しているとなかなか考えることのない話かもしれません。日本がかつてはげ山だったことや、今の森林にゆがみがあることって、あまり一般的には知られていないと思うんです。だからこそ、物理的にも精神的にも離れてしまった「人と森」との距離を近づけて「分断を超える」ような発信をこの場所から、やってこうと考えています。
森と人の未来のために、
いまできること。