森のこと
森林伐採という言葉について
「伐採」という言葉に対して、どのようなイメージがあるでしょうか。もしかすると、「自然によくない」とか、「環境破壊」などのイメージがあるかもしれません。
かつてわたし自身も「木を伐る(きる)のって自然破壊なんじゃないの?」と友人に尋ねられた経験があり、そのときは「伐採のとらえ方って、人それぞれ違いがあるんだ」と改めて気づきました。
森林伐採とは、林業分野ではただの「収穫」です。熟した野菜を収穫するように、「育った木を収穫する」ということ。実際の林業現場では、伐採を行わない状態が続くと森のなかが木で混みあってしまうため、「木が育ちやすい環境を作ってあげる」という意味でも、伐採はとても大切な作業です。
たぶん森林伐採は、それ自体が問題なのではないのだと思います。伐採が環境に悪いということなのではなく「やり過ぎてダメージを与えてしまうこと」や「恵みをありがとう」という気持ちを忘れてしまうことが、本当に目を向けるところだという気がします。森林とは私たちが木材を得るためだけの場所ではないからです。
動植物の住処となったり、雨を受け止めて川の流量が増えるのを遅らせたり。「森林の多面的機能」と呼ばれる、多くの役割が森にはあります。そうしたいくつもある「森の役割」を視野にいれ、丁寧に行う伐採なら、それはとても大切なことです。
つまりわたしたちが目を向けたいのは、「森林伐採をしないこと」ではなく「どんな伐採なら、森を健康に保てるのか?」という部分です。本当に必要なのは、森林に過剰なダメージを与えない伐採。豊かな森をつくる伐採なのであって、たぶん、「伐採をしないこと」ではありません。
「これなら正解だ」という方法が分からないなかで、「豊かな森をつくる伐採とは?」という問いに結論をだすのは本当に難しいことです。たとえば伐採の方法を今から変えてみても、そのやり方が本当に良かったのかどうかが分かるのは、数十年後。世代を超えるほどの長い時間を相手にするのが、林業です。
安城市を流れる矢作川の上流域である根羽村にて
先日、伐出作業を見学させていただきました
国土の7割ほどを森に囲まれて生きているわたしたち。日本人の誰もが、森に支えられて生きています。だからこそ「豊かな森とは?」という問いへの答えを、「森がある地域の人だけ」に考えさせてしまうのではなく、みんなで模索していけたらいいなぁと思います。
森と人の未来のために
いまできること。